”さいますみ/崔真淑”のオイコノミクス

Good ・ News and Companiesの”マクロエコノミスト崔 真淑 / さいますみ”です!資本市場、そして経済学の社会的意義を伝えるのが使命です!身近な話から資本市場の最先端の話まで皆様と一緒に考えていきます!ご連絡先はこちら→info@goodnews.jp.net

4月から新しいスタートを切りました!そこで、コーポレートガバナンスについてウーマンエコノミスト目線で考えてみた。

 みなさま、こんばんは!グッド・ニュースアンドカンパニーズ代表で、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみです。おかげさまで、2016年も活発に活動させて頂いてます。今回は、4月から新しいスタートを切った御報告と、それに関してコーポレートガバナンスについてウーマンエコノミスト目線としての問題意識を記していきます!

 

Q1 で、4月からの新しいスタートとは?

 実は、4月から化粧品会社AVONの社外取締役に就任しました。何かとコーポレートガバナンスが話題になる昨今です。AVONの企業価値向上のためのアドバイザー機能としても、資本市場の貢献のためのガバナンス機能としても精進していきます。貴重な機会に恵まれたことに感謝です!

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 AVONの企業理念は”the company for women”。自分の可能性を信じ、前向きに生きる女性を応援していくことです。この4月から女性活躍推進法が施行され、日本の働く女性の環境整備が更に必要になっています。働く女性としての等身大の経験と、これまで培ってきた経済学・ファイナンスの学びを活かしコーポレートガバナンスの観点からも頑張ります。

 

Q2 って、そもそもコーポレートガバナンスって、なに?

 今年に入ってからも、コーポレートガバナンスという言葉を沢山聞きますよね。7&iHDの話はもちろん、東芝、クックパッド…etc。そもそも、コーポレートガバナンスとは何であり、なぜ必要なのでしょうか?

 ビジネスにおいて画期的な仕組みといえば、株式会社です。これにより、アイディアはある!でもお金はない!という主体と、お金はある!でもアイディアはない!という主体を結びつけることを実現しました。つまり、株式会社=経営と所有(出資者)の分離を可能にし、ビジネス運営のリスク分散を可能にしました。結果、社会の発展に大きく寄与したのです。でも、何かを得れば何かを失います。欠陥もあったのです。

 経営者と出資者を分離したことで、出資者が意図しないところで経営者が自己利益のためだけに行動しかねないリスクがでてきたのです。そこで、出資者が経営者を監視する仕組みとしてコーポレートガバナンス企業統治)の仕組みを改めて制度化し、資本市場の活性化に繋げようとしているのが、今の日本です。
 
Q3 ふーん。で、それをウーマンエコノミスト目線でどう考えているの?

 この3月に修士論文を書き上げ、一橋大学大学院ICS(MBA in Finance)を無事に修了しました。論文のテーマは、女性社外取締役コーポレートガバナンス企業価値の関係です。論文を書こうと考えるきっかけになった問題意識を、ここに記しておきます。

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(写真は、同じゼミ生のみんなと。先生と同級生のサポートのおかげで無事に修了!)

  コーポレートガバナンス強化として、経営者と出資者の分離による影響を監視するために、社外取締役の導入が国から促されています。一方で、上述したように4月から女性活躍推進法がスタートしたことで女性取締役の導入も、国から促されています。日本の女性取締役比率は、先進国の中でも非常に低い水準です。

 今後は、企業側が、この二つを満たすために女性社外取締役の導入を進めていく可能性があります。しかし、それって企業側にとってはメリットだけなのだろうか?変革の中で、思わぬことも出てくるんじゃないか?等々、思ったわけです。

 メディアを見渡すと、女性取締役と企業価値の関係はポジティブな報道が多いです。それに、女性登用を進める会社はイイ会社的な風潮も無きにしもあらず。そうした流ればかりが続けば、女性登用を進めたことで想定外のことが起きた時に、社会や職場の多様性推進にストップが出かねないと感じたのです。客観的に、どんなメリット・デメリットがあるかを分析して、それを伝えたいというのが私の課題意識でした。

 

Q4 で、女性取締役と企業価値に何か関係はありそうなの?

 論文を書くには、先行研究サーベイが必須。各国の関連論文を集めてみると…

 女性取締役と企業価値には、明確な理論は見当たりませんでした。資源依存理論、エージェンシー理論…いろんな立脚点から女性取締役と企業価値について沢山の実証研究がなされてきました。しかし、その結果は、業種・国・文化・時代…によって様々であり、女性取締役導入=企業価値アップは、常に成立しうるものではありませんでした。

 女性取締役の数と、ROAROEに正の相関があるグラフを見たことがある人は少なくないと思います。でも、それらは計量経済学的な手法を用いて、業種・国・文化・時代といった要因を取り除かずに分析された結果である物が多いと思われます。

 その他には、ちょっと衝撃的な論文も存在します。企業価値の代理変数としてROAと女性役員・管理職の多さの関係を分析している論文がありました。それによると、日本の製造業においては、ROAと女性役員・管理職の多さは正の相関を見せていました。でも、要因を分解してみると…女性雇用促進による人件費節約効果がROAに効いている可能性を示しており。。

 日本の女性は男性に比べて平均賃金が低い傾向にあります。これは、欧米先進国でも見られる傾向でもあります。いろいろ考えさせれます。。

 

Q5 一方、女性取締役とコーポレートガバナンスには何か関係はありそうなの?

 こちらも明確にこうです!という理論は見当たりません。でも、非常に興味深く、肌感覚でも納得しやすい論文を紹介させてください。

 Adams and Ferreira(2009)は、1996年~2003年のS&P1500に採用されている 企業を対象に、女性取締役とコーポレートガバナンスの関係を分析しています。この論文では、高齢の男性だけの取締役会をold boys clubと揶揄しています。

 というのも、男性同士だとつるみやすいし、モノが言える雰囲気が作りにくいんじゃないの?ってことを暗に示しているんですね。(もちろん必ずしもいう場合ばかりじゃないと思いますよ!)そこに女性取締役が入ることで、異性だからこそ言いやすい場面や影響が存在しても不思議ではないのでは?という仮説があるわけです。

 そこで、取締役出席率や社長任期年数をコーポレートガバナンスの代理変数として分析しています。結果は、女性は高齢男性中心の取締役会=old boys clubに染まりにくく、存在その物が「独立性」を有し、モニタリング機能を果たしているといる可能性を報告していました。

 まとめてみると、女性取締役だからこその企業価値コーポレートガバナンスへの影響ってのは、メリットだけじゃないだろうけど、でも機能しやすい場面は確実に存在すってことですね。

 

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(写真はAVONの皆様と!素敵な方ばかりで、頑張るぞ!という気持ちになれました!皆さま、ありがとうございます!)

 

私も、経営層の方々に的確に発言できるよう頑張ります!一次情報は宝の山ですし、積極的に行動していく予定です。

なが~いブログを読んでくださり、ありがとうございます!

引き続きよろしくお願いいたします!

 

崔真淑/さいますみ

 

2015年の学びを2016年に繋げるぞ!~なぜ、社会人になると大学院に行きたくなるのか?~

 みなさま、こんばんは! 

 Good News and Companies代表で、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみです。

2015年も数十分で終わります。今年も皆様のおかげで、無事に仕事を終えられました。ありがとうございます!今回は、2015年もっとも私に刺激を与えてくれた社会人大学院についてまとめます。(実は、それに関する相談も増えてきてます)

 

Q1で、今年はどんな一年だったの?

 先日、パートナー企業との忘年会がありました。各自の2015年を、動物で表現するという企画も行われました。私は「」と表現しました。鴨は、水中で水かきをもがきながら漕いで浮いています。今後も縁と仕事に巡り合うように、社会人大学院でもがいているところが、自分と重なるな~と思ったわけです。

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 現在、私は社会人大学院に通っています。そこでの学びは、直ぐに仕事に活かせる内容から中長期でジワジワ効いてくる内容まで様々です。また、学位を身に着けたからといって、いきなり劇的に変化が起きることは稀でしょう。そんなこともあり、仕事をしながらの通学は周りの理解も必要です。2015年は、いろんな人に助けてもらい、仕事もできたことに本当に感謝しています。重ねてお礼を申し上げます。

 

Q2鴨のようにもがく一年ですか…。で、なんで社会人大学院に行こうと思ったわけ?

 一言でいうと、知識をこれまでのように得ても、それによる限界生産性が低下していると年々感じていたからです。平たく言うと、一つ新しい知識を得たとしても、生産性の向上を感じなくなったということです。例えば、社会人三年目までは新しい知識や現場経験をスポンジのように吸収し、日々の成長を感じるものです。でも、その後は…なんてことを感じる方は少なくないのでは?

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 なぜ、こんなことが起きるのでしょうか?これは、仕事の現場から得られた知識や、経験が増えてくると頭の中で整理しきらなくなることが影響していると思います。それぞれの知識や経験が、どう繋がっているのか構造的に理解できなくなると、情報の海に埋もれます。結果、大量の情報が右から左に流れていくだけになり、考察力はもちろん、自分の強みすら見えなってくる… そんな危機感や、最先端の知の世界に触れ続けて、それを自分の強みにしたいと考えたことが進学の理由です。

 

Q3へー。実際に、頭の中はクリアになったの?

 ですね。いろんな理論を学ぶ機会があるのですが、自分がぼんやりもっていた概念を整理してくれます。例えば、その企業にとって最適な取締役会構成はどんな形か?と議論しようとしたら、それぞれが主観で話をすることになることが多いかもしれません。でも、理論の世界では取締役とは何と位置づけ、役割は何があるのかのフレームワークを与えてくれます。考える軸を与えてくれるんですよね。

理論なんて、現実の話に応用できるかよ!なんていう人は少なくないと思います。でも、理論といのはそのまま適用することもあれば、その理論が出てきた時代・問題背景を踏まえると、自分の考える軸を与えてくれるんですよ!!!

 

私は抽象度を高めた議論や、構造的理解をすることが非常に苦手でした。でも、社会人大学院に通えていることで、そうしたことや、沢山の仲間と縁を授かりました。

2016年も2015年に得てきた最先端の知を活かしつつ、新しい知識をインプットして、皆様にお役に立てれるよう精進します!

引き続き宜しくおねがいします!

 

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崔真淑/さいますみ/Sai Masumi

計量経済学を勉強して、反省したこと。なぜ、分析には「愛と勇気と直感力」が大切なのか?

 みなさま、こんばんは!

 Good News and Companies代表、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみです

 今日は、私が勉強する中で、反省したことを徒然に書きます。戒めを込めて書きます。この経験が、誰かの役に立ちますように…。 (長いんで、Q1、4,5だけでも!)

  

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(写真は、WIKIMEDIAより。なぜ、FRB議長イエレン氏の写真があるかは、Q5で見えてきます(汗))

 

Q.1で、反省したことってなに?

 ただいま、修士論文作成に奮闘中の私です。データ収集はもちろん、実証研究論文を深読みしつつ、データ分析のための計量経済学の復習をしています。どんなモデル手法で分析すべきか、さまよっています。そんな、計量経済学に全力投球です!という時に、TwitterでBuzzっているAmzonレビューを見つけました。

www.amazon.co.jp

 レビューは、某国立大学の先生にTwitter上で教えてもらいました。レビューの中では、実証研究から解明できることは、あくまで平均的な傾向。結果に対する説明力は約5-15%程。計量経済学の結果から出てきた有意な説明力と、現実への説明力とは違う!ということが書かれています。計量経済学の手法から導かれた結果と、どう付き合うべきかを的確に示していると思います。

 マクロな政策というのは、平均的に効果の出る施策を行うことだし、政策関係者にとって計量経済学による実証分析は重要。個人レベルでは平均的な結果だけに囚われるのでなく、自分の環境と向き合い、残りの85%を埋めるために、どう努力するかをすべきでは?とヒントを示しています

 計量経済学で導かれる結果を万能とは思っていませんが、ここまで的確に整理できていたかというと…反省。。 なぜ、マクロな視点と、ミクロな視点を使い分ける必要があるのか。そして、社会科学との付き合い方が見えてきますよね。

 

注)ちなみに、本の著書である慶応義塾大学の中室先生は、NewsPicksプロピッカー第一期のお仕事でお世話になりました。献本して頂き、非常にわかりやすく、多くの論文や実証分析からの話が、俯瞰できます。まだ子供のいない私ですが、一つの指針にしたいと思ってます。 今回のブログは、あくまでレビューから考えた計量経済学との付き合いからにフォーカスしています。

 

Q.2これって、あなたの研究テーマでも同じようなことあるの?

 めっちゃ、あります。私の研究テーマは、上場企業を取り巻く制度変更と、それによる企業価値と雇用の変化について。アベノミクスが始まり、コーポレートガバナンスコードが制定され、女性の活躍が推進されました。国内の上場企業の環境は大きく変化しています。欧米では、こうした動きは既に起きており、海外論文を参考に研究を進めています。

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(写真は、精読中の論文さんたち~)

 

 精読中の論文には、女性取締役を義務化導入国の、上場企業の企業価値の変化や、ガバナンスが相対的に低い企業に、女性取締役が入った場合の影響…etcが測定されています。その他にも企業価値に関する論文をいくつか見ていますが、企業価値の予測や関係性を分析するために考えられたモデル(=その事象を解明しようと構築された、枠組みです)による、その企業価値の変化に対する説明力は10-20%ぐらいが多いですっ(`・ω・´)キリッ(論文は私が見た限りですけどね…。モデルの一例は→Y=α+β1X1+β2X2+εのような形をしたのとか)  

 

 

Q.3 説明力低くて、意味あるの??

 えー低い!と思うかもしれませんが、平均的な傾向と枠組みを見つけることが重要なんですよね。企業価値に影響を及ぼすものなんて、無数にあるし、全てのデータを手に入れるのは不可能。だから、説明力がこの程度になるようです。むしろ20%あったらすごいぐらい…

 一方で、説明力があるから現実に応用しやすいかというと、そうでもないことも多々あるのです。例えば、犯罪発生率を、人口で説明しようとします。たぶん、説明力は、非常に高いです。そりゃ人が増えたら、犯罪も増えるでしょうよ…。でも、この結果で、どんな施策をしたらいいか、難しいですよね。意味あるモデルなのでしょうか?

 こで、失業件数と人口で、犯罪件数を解析するためのモデルを組み、失業件数と犯罪発生件数に有意な関係性が見られたとします。失業件数だけで、犯罪件数の変化全てを説明することはできないけど、何かしらの施策は打つきっかけになります。(一例なので、すごい単純化した話ですよ)

 また、有意な関係性があるからといって、現実にすぐ応用できるかというと、そうは言い切れない。例えば、女性取締役比率が1%増えるにつれて、役員報酬が0.01%増える傾向が、上場企業で見つかったとします。現実的に考えるとインパクトが小さ上に、どう解釈すべきか難しいところ…。もちろん、その逆が発見されることも多々あります。いやー実証分析って、ほんまにムズイ。。

 

Q.4じゃあ、計量経済学から出てきた結果って、どう向き合えばいいの?

 説明力があるモデルと、その事象の枠組みを説明しきれる良いモデルは、違う場合があるのを、念頭に置く必要があるかと。そして、良いモデルができ、新しい傾向を見つけたとしても、Q.1に書いたような理由から、現実に応用するためには過信しないことと思います。

  

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(イラストは、ビジネスアイコン無料素材HPより)

 日々、マーケットと向き合っていると、過去のデータや傾向を見ると、株価は上がりそうとの予想が出てきても、企業訪問やCEO取材をして、やっぱり上がると思えないわ…というこも多々あります。その後に下方修正が…ということも無きにしもあらず。。モデルで100%説明しきれないだけに、やっぱり何かを判断する時は自分の直観力って重要だと思うんですよね。成績を出し続けるファンドマネージャーの方や、M&Aの超プロの方に話を聞いても、物凄く自分の感覚を大事にされています。経営者やステークホルダー表情、言動、人柄、企業歴史という、数字や理論で解明できん調査怠ってあかんわけです。

  物事を俯瞰する立場の人や、大胆な施策を行う役割の人にとっては、こうした実証分析に基づいた判断は非常に重要です。私たち個人にとっては、他者と比べるツールとして使うだけでなく、その結果が100%自分に当てはまるとは限らないのだから、一般事象と比較しすぎても意味が無いかも!と割り切ってみるのはどうでしょう?

 

 

Q.5で、冒頭にイエレンさんの写真があった理由は?

 それは、イエレンさんの言動を分析するには、計量経済学との付き合い方を再考するべきと思うことがあったからです。先日、あるジャーナリストの方と、米FRBが9月利上げをしなかった理由や、イエレン議長が何を見ているのか?という話になりました。なるほどなーと思ったことがありました。で、その方は…

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(写真はWIKIPEDIAより)

 理論で説明できるものは議論の対象になりにくい。理論で説明しきれないことだからこそ、騒がれるし、注目される。そして、理論で説明できない環境の中で、イエレンさんや、権威ある人達は、決断をしなくてはいけない。そうなった時、何を拠り所に決断するのか? それは、その人の経験、生い立ち、価値観が大きく影響してくるだろう…だから、単に理論的な枠組みを見るのでなく、そうした権威ある人たちの生立ちや、価値観を知る必要があると…、仰ってたんですよね。

 この話は、Q1~4に書いた計量経済学との付き合い方を示していると思うんです。モデルで説明、予測しきれない部分を知るためにも、こうした視点って、マクロ経済分析にも、企業価値分析にも…すべての分野で必要だなーと。頭でっかちになったらあかんわけです。。

 

 愛をもって問題意識をとらえて、時間をとことん費やす勇気をもって、結果を過信しすぎず、直観力の要素も考慮して、計量経済学と付き合っていきたいです。だって、世の中には説明しきれない変数が多すぎるから。

 本当の分析は、日々の小さな分析を積み重ねて、直観力を磨くことなのかもしれません。

 

ながーいのに、読んでいただきありがとうございます!

引き続き、応援よろしくおねがいします!

 

崔真淑/さいますみ

 

 

「女性活躍推進法案」は、日本だから効果がジワリでてくると思う理由

みなさまこんばんは!

 Good News and Companies代表で、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみです。

 8月28日に「女性活躍推進法」が成立しました。今回は、推進法の中身と、私たちの生活にどんな影響力を持つかを考えていきます。

 

Q1.そもそも「女性活躍推進法」では、どんなことが義務付けられているの?

 2016年4月からスタートします。中身は、従業員301人以上の企業・公的機関は、社員・役員の男女比率データや、女性登用のための行動計画の公表が求めらています。中小企業は、努力目標とされています。

 しかし、数値目標を法律で定めることは見送られました。また、法律に従わない場合は罰則規定はありません。(虚偽記載をした場合は罰則あり) 罰則規定も数値目標も定められていないので、女性活用への効力がないとの批判が出ているのも事実です。例えば、ノルウェー、ドイツでは上場企業の女性取締役比率が義務つけられたり、その他の欧米諸国でも義務付けはなくても目標値を定める国は多いですしね… 

 

Q2.ほんまに、女性活用に効き目あるん??

 ただ、私は日本だからこそ、効き目がじわり出てくるように思います。例えば、JPX日経400という株式市場のインデックスがあります。これは、日本の上場企業ROE(=株主等から投下された資本に対して、どれだけ収益を上げているかを見る指標)の改善や、投資家からみて魅力的とされる企業を増やすために、導入された指標です。

 この指標が導入された時も、その指標に組み込まれたいからって上場企業が、ほんまに頑張るとは思えんなー等々、いろんな意見が出てきました。しかし、ある機関投資家の方が「日本は恥の文化。嫌な目立ち方はしたくないはず。効果はあると思うよ」と、仰ってたんですね。結果、JPX日経400が導入されてから、ROEを意識した情報開示をする企業は増えているようです。私は、これと同じことが、「女性活躍推進法案」でも起きるのではないかと考えています。(もちろん、女性活用≒企業価値向上、ROE向上と必ずしもなるわけではないのは各研究から示されているので、まったく同じとは思っていませんよ。ここでは、恥の文化について言っているだけですよん。)

 

Q3.他にも同じような事例はあるの?

 上場企業の企業価値を高めるために制定された、コーポレートガバナンス・コード(上場企業の企業統治に関する上場規則)も、法的拘束力はありません。しかし、Comply or Explain=実施するか、実施しない場合は説明せよという原則に基づいており、嫌な目立ち方を嫌ってか、ほとんどの上場企業が受け入れています。実際、コード発足1ヶ月後の実施状況を見ると、東証一部・二部企業では30社ほどしか実施しない説明をしているに留まっています。

(もちろん、このコードの中身に対しても、いろいろ言われてはいるようですが…)

 

Q4.で、今の女性の就労率ってどうなの?

 ということで、恥の文化を意識して女性活用は進むような気がします。同業界の同規模の企業が、積極女性登用をしていたら追随せざるおえないような空気が流れてくるかと思われます。情報開示、目標設定に積極的な場合は、事業入札でも優遇措置をとるようですしね。

 アベノミクスは始まってから、女性の就労率は右肩上りが続いています。ただし、実態は非正規雇用の増加していることや、賃金面での格差が大きいのも事実。他国に比べて、就労率は低いのも事実。(実は、アメリカは右肩さがりで、数字だけをみると日本と同水準なんですね。

 女性の就労環境については、9月一回目の日経CNBC「崔真淑のお金に好かれる働き女子学」で、働き女子先進国の現状に迫ります!こちらもよろしくです!

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(制作:日経CNBC「崔真淑のお金に好かれる働き女子学」制作メンバー、日経映像、テイクワン)

 

今日も読んでいただきありがとうございます!

応援いつもありがとうございます!

 

崔真淑/さいますみ

 

NHK BS1「経済フロントライン」出演からの学び。ハイブリッドキャストから、地方経済まで!

 みなさまこんばんは!

 Good News and Companies代表で、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみです。

 今回は、先日出演させて頂いた、NHKBS1「経済フロントライン」を振り返りつつ、番組で印象深かったことや、お伝えしきれなかった内容を記していきます。今回は二回目の出演なことや、キャスター、スタッフの皆様のおかげで、出演を更に楽しめたと思います!有難うございます!

 

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(写真は、キャスターの野口さん、竹内さんと。楽しく番組を終えれて、超笑顔な写真に。)

 

Q.1番組全体で驚いたことは?ITでTVはどう変わろうとしているの?

 番組冒頭では、その一週間に注目されたニュースを振り返ります。その後に、注目イシューを深堀していきます。何がすごいって、解かりやすく経済を深堀るだけではなく、ハイブリッドキャスト対応(!)なんですよね。

 番組進行と同時に、手元のスマホで用語解説を見れたり、番組内容を確認できるんです。ハイブリッドキャストとは、NHKさんを中心に開発された次世代放送規格です。TVにIT(通信)の要素を加え、視聴者もインタラクティブに番組に参加できる仕組み。例えば、NHK「かおテレビ」では、自分で主人公を作れちゃいます。

 

 他局では、関西の朝日放送の試みも注目されています。なんと、CMに対しても、視聴者の反応を見れるとか。CMへのコメントを集めることで、視聴率でしか計測できなかったCM効果を、より詳細に測定できるとか… 

 TVの次の形を、肌で感じた一日にもなりました!

 

Q.2 で、経済ネタでは何に注目したの?

 「あ・す・ヨ・ミ」のコーナーでは、イマの日本経済の動向について解説しました。17日に4-6月GDP(経済の基調を示す指標)が発表されます。順調に経済回復を示すのか?、停滞していくのか?を、写真のボードを使って、野口さんとの掛け合いでお送りしました。特に地方の足=軽自動車販売の停滞や、消費についての解説を行いました。大都市圏の回復が、地方にはなかなか循環しいていないようです。

f:id:saimasumi:20150813145100j:plain(写真は番組内でつかったボードの縮小版。崔の顔も!)

 

Q.3なぜ、大都市の経済回復≒地方の経済回復と、スムーズにいかないのか?

 昔は、大企業の受注企業が地方に多く点在していました。しかし、現在は大企業は海外で製造し、海外で販売する地産地消の流れに。。理由は、海外で需要が伸びているから。一つの仮説ですが、こうしたことが、大企業が多い大都市圏で景気が回復しても、地方経済にすぐに連動しにくいと思われます。これは、日銀短観(企業の経営への気持ちを示す経済指標)を県別の推移を見てもうかがえます。

 また、こうした流れも重なり、都心と地方の賃金格差も縮小しにくい…この状況では、円安等によるコストUPを価格転嫁できない地方企業は多いと思われます。

(この辺りは、詳しくはこちらのブログで→http://saimasumi.hatenablog.com/entry/2015/07/28/203623

 

 

Q.4そんな中で、注目している地域とは?

 私が個人的に注目しているのは、島根県松江市です。コンピュータープログラミング言語のルビーのメッカとして、街のブランディングが進んでいます。ルビーを使える人材を増やすだけでなく、その分野に関する集積地域として有名です。そのおかげか、県内ソフト系 IT 企業の 2012 年度の売上高は 178 億円と、2007 年 度対比 5 割程度増加しています。また、従業員数も約 1,900 人と約 4 割増加し、雇用も増えているのです!

 IT企業を家賃の安さで誘致しようとする地域は増えています。しかし、ビジネスに効く情報というのは、オフラインで得られることが多いです。同業者が沢山集まるようにし、その業界に関する情報が集まる街創りが出来ないと、誘致というのは難しいのではないでしょうか? そんな視点からも、松江市には注目しています!

 

 

今日も読んで頂きありがとうございます!

応援いつもありがとうございます!

 

崔真淑/さいますみ

 

日経CNBC「崔真淑のお金好かれる働き女子学」を振り返る:~仕事運を上げる方法を真面目に考える!~

 みなさまこんばんは!

 Good News and Companiesの、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみす!   

 今回は、週末に帰省したことで得られた教訓。そして、日経CNBC「崔真淑のお金に好かれる働き女子学」毎週金曜日18時45分~50分で放映中の内容を交えて記していきます。今回のテーマは、仕事運を高める方法についてです。

 

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(出所:日経CNBC「崔真淑のお金好かれる働き女子学」紹介WEBページ 撮影風景です!)

 

Q.1帰省先で感じたことは?そこから得た教訓とは?

 この週末、三重県の実家に帰りました。地元の同世代ビジネスパーソンと、話をする機会がありました。そこで気になったのは、ITツール活用法・情報収集の方法…都心で流行しているITツール認知度が高くないと感じたことです…「こんなアプリ、ツール使うと仕事の効率度も増すし、創造的なことに更に時間使えるよん!」と紹介したら喜んでくれました。

 振り返ると、私も重要なITツールは、オフラインでIT関係者から直接知ることが多かったです。(私的な経験ですが)そこからの教訓は、どれだけIT化が進んでも、重要情報を得られる機会は、オンラインだけでは頼れず、オフラインも非常に重要だということです。なぜ、起業家が根津や渋谷に、そしてシリコンバレーに集まるかを、改めて肌で感じました。

 そんな教訓から、今回はオフラインの出会いが、どう仕事運を高めるかを考えます。

 

Q.2仕事運がある人は、どんな傾向があるの?

 仕事運の高い人の特徴を、超科学的に分析された文献はないのでしょうか?そんな中で出会ったのが、矢野和男氏の書著「データの見えざる手」(草想社)です。斬新な視点が沢山あり、崔も夢中になって読みました。

 彼は、自分を含め関係者に、ウエラブルセンサを付けてもらいました。そこから得られた100万個のデータを元に、仕事運の高い人の特徴を実証したのです。ここでいう仕事運が良い人というのは、仕事の遅延が少ない人や、問題解決能力に長けている人を指しています。では、どんな人が仕事運が高かったのでしょうか?

 答えは、知り合いの知り合いが多い人でした。理由は、身近な友人等の知り合いが少なくても、その先にある知り合いの知り合いの数が多いと、知恵を借りれる確率が高くなるのです。友人や仕事仲間に相談しても、答えが見つからない場合があります。でも、その友人が「じゃあ、私の友達に聞いてみるね!」と、協力してくれたことありませんか?

 

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(出所:矢野和男著:「データの見えざる手」、制作:日経CNBC、日経映像)

 

 

Q.3 私たちは、これをどう活かせばよいの?

 矢野和男さんの研究では、社員同士の繋がりがある企業ほど、開発遅延が少ないなどの傾向が見られています。繋がりが、企業価値に大きく影響してそうですよね。会社で行事やイベントを行うには一理あるようです。企業内で、コミュニケーションを円滑にするための施策を行っているのは、無駄でなく要ってことですよね。

 投資家ならば→企業見学、訪問などで社員同士の繋がりをチェック!仲の良さは企業価値向上の源泉になりかねないと意識!

 働き女子・男子ならば→単にロジカルに仕事を進めるだけでなく、いつもの仲間だけで時間を過ごすのでなく、広く小さくコミュニケーションの輪をつくる。そして、知恵を借りれる確率を高める!

なんて、ことが有効ではないでしょうか?考えてみたら当たり前なのですが、なんでもオンラインだけで済ませることができず、こんな時代だからオフラインの出会いを大切にしたいですよね。

 

Q.4 でも、知り合いからの情報と、知り合いの知り合いから得られる情報に違いもあるのでは?

 と、疑問に思った人も少ないくないはず。それは、スタンフォード大学のグラノベッター博士の、社会ネットワーク研究論文にヒントがあります。詳細は、こちらを見てね♡

(宣伝になって恐縮です。初月無料ですから!)

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(制作:日経CNBC、テイクワン)

 

 

 

おかげさまで、番組も第2クールに突入しました!

いつも応援ありがとうございます

引き続き燃えていきます!

 

崔真淑/さいますみ

 

 

 

国内3000kmの移動で見えてきた地方経済のイマ!なぜ、無形資産への投資が大切なのか?

 みなさまこんばんは!

 Good News and Companiesの、マクロエコノミストの崔真淑/さいますみです!

この1ヶ月、講演の仕事で様々な地域への出張しました。地方経済活性化のヒントを、総括としてまとめます。新潟県編はこちら青森県編はこちらへ

今回のお話は、月曜レギュラーを担当しているBSJAPAN「日経モーニングプラス」のコーナー『さいますみのマーケットラボ』の話も交えて書いています!

 

Q.1そもそもどこ、どこに出張に行ったの?

 東京から大阪、新潟、青森へと約3000kmを移動しました。各地で地方経済のリアルを、伺うことが多数ありました。非常によく聞いたのは「円安つらいよ~」という声でした。地方は都心に比べて、地元に根付くスーパー・飲食業等のサービス業比率が高い傾向にあるようです。今、仕入れ価格が、円安で値上がりしつつあります。もちろん、販売価格に価格転嫁できれば問題はありません。しかし都心と比べて賃金格差が大きく、円安コストUP分を、直ぐに価格転嫁できないことが課題です。

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(制作:BSJAPAN、日経映像)

 

Q.2なぜ、賃金格差が大きいの?

 賃金水準を規定しうる労働生産性の改善が、地方で起きていないのです。労働生産性は、①資本・設備の質、②労働の質、③技術革新度(TFP)の3つで決まります(もちろん、この3つだけに分解することの短所もあります。話がそれるので、ここではふれません)。成熟した日本では、①の質は非常に高く、今起きている設備投資需要も更新需要がほとんどのようです。②に関しては、高齢化していく中で数は減っても質を高める可能性は十分にあります。となると③が気になりますが…

 下記のグラフは労働生産性上位10と下位10を県別に並べたのです。。労働生産性を決める①②③の要素を色で区分けしています。都市圏に比べて、地方は技術革新度(TFP)の停滞傾向にあります。これが原因で労働生産性を下げ、賃金格差を埋められない背景にあるようです。では、こうした地域で技術革新度を高めるためにはどうしたらよいのでしょうか?

 

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(制作:BSJAPAN、日経映像)

(出所:RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037) データは2009年時点

 

Q.3技術革新度を高めるためには、どうしたらよいの? 

 こうした地域の企業で技術革新度を高める投資が少ないことが影響しています。技術革新度を高めるには、無形資産投資の拡大が必要です。企業の技術革新度を高めるイノベーション活動に必要な支出は無形資産として蓄積され、付加価値をうみだす生産能力となって現れます。  

 実は、OECDデータ、内閣府レポートや、各種論文等で、無形資産と企業の生産性には密接な関係が示されています。例えば、以下のような結果が示されています。

①無形資産ストック蓄積の多い国ほど、労働生産性が高い傾向
バブル崩壊後、日本は無形資産投資が低迷している
③無形資産投資の内訳では、日本は情報化資産等への投資が多い。欧米では経済競争力に繋がりやすい広告宣伝費、人的投資が多い
等です。
 
 
Q.4そもそも無形資産ってなに?どうしたら増える?
 そもそも無形資産とは、a)データベース等の情報化資産、b)著作権やライセンス等の資産、c)ブランド力や人的資本、組織資本等の経済競争力という3つがあります。上記③にあるよう、日本はc)が相対的に不足しています。この無形資産投資を、増やすためにはどうしたらよいのでしょうか?
 私は地方経済の金融情勢、企業情報が集約している地方金融機関の支えが重要になると考えています。地方金融機関の情報生産性を高めるための、デット・ガバナンス向上が課題と思われます。私の予想は、金融庁は、こうした技術革新度が低迷している地域の金融機関ほど再編を進め、地方経済の新たな牽引として再生するのでは?と考えています。 これからさらに、地方経済の支え役として地方金融機機関に関するニュースは増えそうですね。
 

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(制作:BSJAPAN、日経映像)

 
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崔真淑/さいますみ

 

 

 

 

(制作:BSJAPAN、日経映像 BSJAPAN「日経モーニングプラス」は平日6:38~放送中!)