”さいますみ/崔真淑”のオイコノミクス

Good ・ News and Companiesの”マクロエコノミスト崔 真淑 / さいますみ”です!資本市場、そして経済学の社会的意義を伝えるのが使命です!身近な話から資本市場の最先端の話まで皆様と一緒に考えていきます!ご連絡先はこちら→info@goodnews.jp.net

IPO後の明暗分ける要因を、マジメに考えてみると意外なことが見えてきたぞ!

みなさまこんばんは!

Good News and Comapaniesの、さいますみです。

10月17日のBSJAPAN、朝6時40分〜NIKKEI朝とく「さいますみのエコノゼミ」でお話した内容を紹介していきます。今回は、このところIPOラッシュということもあり、IPO後も業績も株価も伸びて行く企業の特徴を、過去の実証分析を元に簡単にまとめました。

(長いので、時間がない方は*結果は…の箇所からどうぞ。)

f:id:saimasumi:20141017075726j:plain (制作:日経映像)

IPO件数は…

そもそもIPOとは、未上場企業が、新規に証券取引所に上場。そして投資家に株式を取得してもらうことを指します。ネット企業の一部には上場後に株価が数十倍に値上がりするものもあり、夢のある投資として人気です。そして、2009年からは資本市場が安定しているということもありIPO件数は右肩上がりで回復しています。直近ではリクルートの上場等も話題になりましたね。世界的に株価が下落基調にも関わらず、初値は公開価格を上回りしました。

f:id:saimasumi:20141019204859p:plain(出所JPX)

IPO後の多くの企業の現状…

ただ、この夢のある投資ですが、右肩上がりで株価も業績も伸びていく企業はごく一部。その一部の企業にははどんな特徴があるのか、神戸大学忽那憲治教授の論文「IPO後の高成長企業と低成長企業(2014)」を参考に読み解いてみましょう。忽那教授は1997年から2010年までにIPOを実施した企業を対象に分析されています。多くの企業がIPO後は、従業員数、売上高を順調に伸ばしていることが伺えます。しかし、上場後からROA(総資産営業利益率=収益性を見る指標)は、多くの企業で年を重ねると共に、右肩下がり。また、株価もIPO後の36ヶ月後までウォッチしてみると、株価パフォーマンスも、多くの企業で右肩下がりの傾向にありました。(ただし、この株価傾向は他国でも見られるようです 忽那教授2008a)。株価も収益性も向上させ続けられるのは、本当にごく一部なんですね。

 

*では、株価も業績も高成長を続ける会社にはどんな特徴があるのか?

巷では、大手証券会社が手がけたIPO案件は手堅い(過去に、某中堅証券会社が手掛けたIPO案件では、上場直後に見通しを変えざるおえないような、発表をしたこともあり、こうした話も聞こえてきます)、VCから多額の出資を受けていると売出の反動で株価は下がりやすい、設立年数が若いと…等々、IPOにまつわる噂は多く聞こえてきます。

忽那教授は、企業パフォーマンスとして①従業員の増加率②売上高成長率③売上高営業利益率ROA(営業利益ベース)⑤ジャスダック指数に対するIPO後の36ヶ月間の株価超過リターン(①〜⑤の期間については論文を参照くださいませ)の5項目を指標とされています。

これらの指標が、1)IPO企業の特徴、2)IPOの特徴、3)IPOの保証期間(証券会社等)の特徴において、①〜⑤の企業パフォーマンス指標に違いが生じているかを考察されています。

 

*結果は…

と、ここでは意外感があった物を紹介しますと…

なんと、経営者が若い(40歳未満)企業である場合と、そして企業設立年数が若い(10年未満)と、①、②及び⑤は良い傾向にあり、関連性も有意な結果がでていました。考えられる背景には、CEOが若いと、経験豊富なCFOが付きやすいといったことや、企業設立年数が若いと大胆な企業活動ができるといったことがあると思われます。

フレッシュなIPO企業ほど企業パフォーマンスはよいみたいですね。

そして、上述したVCによる株式の売出の影響は株価に対しては有意な関連性は見られませんでした。また、有名証券会社が主幹事を行うことについては、①〜⑤全てにおいて、有意な関連性は無い結果に。。もしかしたら、これは証券会社側も、IPO企業に対して、更に何かしらのサービスやビジネスチャンスがあることを示唆していたりして…!?

(あくまで関連性があるということで因果関係を示しているわけじゃないよ!ここでは、リサーチデザインの方法や、t値についてもふれていませんが、話が複雑になるからです。きっかけになるための入り口としてわかりやすい話だけを書いています

 

IPO企業に投資をしたい方は沢山いると思いますが、周りの空気に飲まれずに、経営者の人柄や組織について、いまいちどよ〜く見てみるのも重要そうですね。  この他にもIPOに関する研究は沢山あるので、また適宜紹介していきますね!

 

*知の生産物=論文

IPO企業が沢山出てきて、雇用が生まれるのは素敵なこと。そして、こうした論文=知の生産物が沢山生み出されることで、高成長企業を生み出す鍵が見つかれば、日本にとってベストな政策を生み出すきっかけになります。

引き続き、わかりやすく、簡潔に、平易な言葉で、メディアやブログで論文を紹介するべく、精進していきますので、 応援宜しくお願いします!

メディアから日本経済応援じゃー!!

 

今日もありがとうございました!

さいますみ