【職務発明】2月27日BSJAPAN「日経モーニングプラス」振り返り!日本だから研究開発が必要な理由とは?
みなさま、こんにちは。崔真淑/さいますみです。
暖かい穏やかな日も増えてきました。実は、私事ですが4月からある変化と向き合います。(←こちらは別途報告させてください)
4月から全力スタートができるよう今年の出来事を猛省中です。今回はBSJAPAN「日経モーニングプラス」コーナー~さいますみのマーケットラボ~で取り上げた、日本だからこそ職務発明が必要な背景を探っていきます。
(制作:BSJAPAN「日経モーニングプラス」クルー陣)
Qそもそも職務発明とは?
職務発明とは、「従業者等」(会社の従業員など)が職務上行った発明を指します。更には、特許庁HPに行くと、組織の研究開発活動が日本の知的創造において大きな役割を果たすことから、研究開発投資を積極的に企業が行えるようにするための職務発明制度を設けています。
更には、先日、日経新聞朝刊一面に以下の記事が掲載されました。各企業で、職務発明を促す取り組みが紹介されています。東芝のフラッシュメモリーや、日亜化学工業の青色LED訴訟など、価値観を変化させた発明も、全て職務発明が発端です。
しかし、そうした成果物を得るには、企業側の目に見えない投資である研究開発費に投資をすることが必要です。さて、日本の研究開発費の動向はどうなっているのでしょうか?
Qで、日本企業の研究開発費の動向は?
こちらの図表は、各国の上場企業を対象に研究開発費を削減した企業比率をまとめたものです。つまり、数字が大きければ大きいほど研究開発費を削減しているということです。
日本はどうでしょうか?実は、バブル崩壊後から研究開発費を削減する企業比率が40%を一環して超えています。その高さは、他国と比較しても目立ちます。
製造業に強みを持つドイツ、製薬・金融・ITに強みを持つアメリカ、ハイテク分野に強みを持つ韓国…と国によって産業構造が違うことを考慮すべきですが、これだけ数字が違うには、驚かされます。
また、実証研究の分野では無形資産への投資度合の違いが、主要先進国の中でも日本のROEが低い背景にあるのでは?という研究結果も存在します。
<研究開発費を削減する企業の比率(%)>
1995-1999 | 2000-2004 | 2005-2009 | 1985-2009 | |
日本 | 47.5 | 42.5 | 41.7 | 41.5 |
アメリカ | 18.8 | 27.3 | 23.3 | 22.5 |
ドイツ | 21.4 | 40.3 | 35.9 | 35.3 |
韓国 | 40.6 | 34.1 | 36 | 35.5 |
出所:一橋大学大学院 野間幹晴准教授「日本企業の競争力はなぜ回復しないか」『一橋ビジネスレビュー』2010年秋
Qなぜ、研究費開発費は削減傾向にあるのか?
では、なぜ削減傾向にあるのでしょうか?日本の上場企業の話になると、現預金が企業内に蓄積されている話題になることがありますよね。お金はあるんです。更には、ある物にお金を費やしていることも影響があるのではと、上述した出所論文では指摘されています。それは、配当です。
こちらの研究論文では、(上場企業全体の研究開発費)÷(上場企業全体の配当金額)の推移も示されています。つまり、研究開発費と配当金が相対的にどのような動きをしているかを示します。
それを見ると、2000年は4を超えていたものの、2009年には2を割り込み、低下傾向を示しています。つまり、研究開発費という株主にリターンを返すには時間がかかる支出よりも、株主にすぐにリターンをだせる配当支出に上場企業全体が偏っている可能性を指摘しているのです…。
中長期戦略が重要といわれているが、数字をみると短期戦略に傾きつつあるかもということなんですね。。
その他にも、会計基準の違いから研究開発費を資産計上できるかどうかといった、制度面も影響も各研究では指摘されています。IFRS(IAS3,38)では回収可能性がある研究開発費は資産計上できる場合があります。
一方で、日本基準では費用計上されるのみで、資産にはなりません。これらを考えると、職務発明を促すための資本市場改革はもちろんですが、会計に関する議論も更に活発に!?
(注)ちなみに、研究開発費における対GDP比率は日本は高いぞという声もありますが、会計上の研究開発とGDP統計における研究開発の定義の違いから真逆の結果になっていると思います。日本経済のドライバーである上場企業において、会計上の研究開発費減少は、留意すべき視点だと考えています。
ということで、長い文章を読んで頂きありがとうございます!
応援ありがとございます。
更に精進します!
崔真淑/Sai Masumi (さいますみ)