なぜ株高でも、日本人の株式保有比率は上がらないのか?〜日経WOMAN×日経FinTech「お金と私をアップデート2017Autumn」登壇を振り替える!
みなさま、こんばんは。
エコノミストの崔真淑(さいますみ)です。9ー10月に動き回りすぎたおかげか、少々疲労感が拭えてない自身でございます(汗) 11月は、休むも仕事とばかりに小休憩も取りつつ、精進していきます!
先日、題名にあります素敵なイベントに登壇させて頂く機会を頂きました。人生100年時代を生き抜くための、お金にまつわる制度、知見、視点をアップデートしよう!というものです。貴重な機会に感謝です。
*株高でも日本人は◯◯◯が一番好き!?
今回は、そのイベント登壇を振り返りつつ、俗に日本人は投資が苦手な国民!お金が好きじゃない国民!なんて言われてる背景を精査します。
特に、この超株高にも関わらず、更には年金制度も不透明感がある中で、金融資産の株式保有に焦点をあてます。保有比率が低いのは、国民性だけなのでしょうか?
どうやら、日本人が大好きな◯◯◯が、株式保有比率に影響があるようです。親世代が子供世代にやたら勧める◯◯◯です…。
では、人生100年時代にむけて、資産形成のヒントを記していきますね!
(イベントでご一緒させて頂いた、きんゆう女子。の 鈴木万梨子さんと!)
*お金は大事だよね〜!
登壇させて頂いたトークセッションは、お金と私をアップデート 2017 Autumn|日経WOMAN/日経FinTech主催イベント。の、「夢とお金のリアル ~ホントのおサイフ事情~」というドキッとするものです。
会場の皆様が、スマホでアンケートに答えてくださると、結果が目の前のスライドにリアルタイムに表示されるという仕掛けも非常に興味深かったです。なかでも、リアルな貯金事情の結果は、衝撃の結果… これは会場の方だけの秘密ってことで(汗)
(モデレーターは日経FinTech編集長の原隆さん!ナイスなツッコミをしてくださったおかげで会場は爆笑に!)
そして、リアルな投資事情も会場のみなさまに伺いました。なんと、半数が既に投資を始めており、投資信託や株式が多いとの結果。イベントの趣旨を考えるとセレクションバイアスはあるでしょうが、すごい結果!!
では日本人の平均的な傾向は…??
下記を見てもわかるよう、米国と比較して日本人の平均的な株式保有比率は非常に低い!もちろん、米国では確定拠出年金の加入スタイルが日本と違うことから若い時から株式投資は馴染みがあるのも影響しているでしょう。
(出所 日本銀行 日米家計のリスク資産保有に関する論点整理 2016年2月)
上記のデータは、2013年のアベノミクスが始まり、日本の株式市場が好調な流れである2015年時点のデータ。米国比較の保有比率はもちろん、時系列でみてもあまり増えてない(涙)
これだけ先行きが見えにくく、終身雇用も大企業の一部業種正社員以外はほぼ崩壊(?)な状況で、お金にも働いてもらうのは必須なはずなのに…。
そのためにNISAも401kも政府も用意しているのに…。なぜだ!日本特有の株式投資や金融資産による資産形成を邪魔する要因があっても不思議でないはず。
*年齢と株式保有比率は関係ない?
まあ、こんな話を書くと、投資するお金がないからだ!年配の人ほどお金と時間に余裕があるから若いうちは無理!歳になったらするよ!
等々、聞こえてきそうです。でも、これ本当でしょうか?下記の研究をみると、衝撃の結果が…
Ameriks, John and Zeldes, Stephen P.(2004), “How Do Household Portfolio Shares Vary With Age?” Working Paper.
これは、米国のデータをもとに株式保有比率と年齢の関係をみたものです。なんと、株式を保有している家計だけを見てみると、年齢が高くなるにつれて、明確に株式保有比率が上昇するような関係は見られてなかったのです!!
更には、全体で見た場合も、株式保有比率と年齢の関係を考えるならば、そもそも株式を保有するか否かの意思決定によって説明できるという結果に…。
つまり、若いうちでも、微々たる資産であっても株式投資する人はするし、歳を重ねたからってするものでもないしという結果なんですね…。
言い訳ってこわい…。
*日本人の資産形成のクセ(傾向)から読み解けることは?
さて、では日本人の自分年金作りにの手助けにもなってくれるだろう(もちろん価値観次第なところもある)株式投資が増えない理由は何があるんでしょ…。
冒頭でも記載した、◯◯◯=不動産が大きく影響しているようです。こちらについては、下記の本で実証研究が明快にまとめられています。
(もちろんリテラシーや文化もあるでしょうが、ここでは資産形成の傾向にフォーカスしてます)
一橋大学大学院教授 祝迫得夫氏 「家計・企業の金融行動と日本」日本経済新聞出版社 http://amzn.to/2AppoGM
この本では、日本の持家思考が非常に強力であることが指摘されてます。1980年代の年間所得に対する持家価格比率は、米国3.2で、日本は7.4との結果…。
もちろんバブル崩壊で前後はしているでしょう。しかし、不動産証券化市場も未発達で流動性も低く、これまでの歴史を振り返ると、日本での不動産保有は資産形成全体に大きく影響してて不思議でないでしょう。
詳細な内容は、是非とも本に目を通して欲しいのですが、こんな傾向がみられるようです。平易な言葉で、研究結果を(あくまで自身が重要と考える箇所)まとめると…
対象データから見られるのは、日本の住宅価格は平均所得水準に対して(他国と比較すると)高い。更には、購入時に相当の頭金を相当用意する必要がある。そしてローン支払いもかさむ。
結果、住宅を購入または考えている世帯(特に若い世帯)は、金融資産を主に安全資産で保有することになる。したがって、不動産保有者の株式需要は、非保有世帯に比べると、どの程度裕福かにかなり影響を受けやすい…。平均的な日本の世帯の総資産の不動産保有比率は高いので、賃貸住宅市場における法規制、金融資産よりも不動産に対してより有利な税制といった問題に関する制度上の変更は、住宅保有だけでなく、株式等の金融資産保有にも大きく影響を与える可能性がある
つまり、日本人に自分年金作りを促すには、金融税制や仕組みだけでなく、一緒に不動産資産形成に関するリテラシーや啓蒙、税制改革が必要なようです。
自身は、持家や新築に拘りはないです。とはいえ、様々な方が持家ないとあかんで!と強烈に推奨してくださって、意思決定が変化しそうに感じることも。
上記の、株式と不動産保有の日本独自の傾向を踏まえると、本当に新築持家が自身にベストかも含めて、人生100年時代設計をしたいですね!
ながーい文章をよんでくださり、ありがとうございます!
明日も精進だ!応援いつもありがとうございます!
崔真淑(さいますみ)