テレビ東京「Mプラス11」出演後記!なぜ、アナリストの株価予想は似てくるのか?~日経平均3万円円予想ラッシュから~
皆様、こんにちは。エコノミストの崔真淑(さいますみ)です。
来週から、博士後期課程の授業が始まります!こうして仕事と研究活動の二足の草鞋生活ができるのも皆様のおかげです。卒業には当然ですが論文生産が必須。そのため、自身の研究分野に関連する論文をひたすらサーベイしようとしているのですが… なかなか進みません(汗)そこで、何かやる気がでる仕組みを作ろうと考えました!
サーベイした論文を、出演番組や皆様のビジネス・投資に関連する事柄と関連付けながらブログとメルマガで紹介しようというものです。論文生産は自分との闘いでしかないというのは承知しています。ですが、誰かのためになっていると思うと、モチベーションを高く維持できるんです。どうか宜しくお願い致します。
そこで、今回は、メルマガ内容の、アナリストの株価予想に関する箇所の一部を紹介します!
*「なぜ、株価予想は似るのか?日経平均3万円予想ラッシュを振り返る」
メルマガでは、「第2章 気になる論文&書籍からのビジネス・投資への教訓」という箇所で、上述したアナリストの株価予想の癖について示唆を与えてくれるだろう関連論文を紹介しています。
このテーマに注目した理由は、自身の出演番組ではアナリストの株価予想が頻繁に出てくることや、それによって投資家行動が変化する様を日々見ているからです。そんな株式市場に影響を与える、アナリストの株価予想…。でも、そこには、ある強い傾向が日米の実証研究で報告されています。それは「株価予想が似る」ということです。でも、なんで似てくるのでしょうか…?
そのヒントになるのが、下記の論文です!
Scharfstein, D. S. and Stein,J, C,, 1990, "Herd Behavior and Investment," AmericanEconomic Review, 80:465-479,
*株価予想について、自身の経験から思うこと
投資をする際、アナリストや有識者の株価予想を参考にすることは少なくないと思います。そうしたアナリストの中には、的中率が非常に高い方もいれ
ば、そうでない方もいらっしゃるでしょう。
自身は株価を当てに行くような芸はできません。リスク分散や不祥事が起きにくい企業の傾向分析など、下落リスクを小さくするための研究をさせて頂いてます(汗)。とはいえ、実は自身も投資銀行でアナリストをしている頃は株価予想を行い、日経平均株価予想も行っておりました。その経験で感じたのは、「外したら怖いな…」という恐怖心です。では、怖いと思うと、何が起きるでしょうか?
それは、有名アナリストと近い予想をだしておけばいいさ!という誘因です。あくまで自身の経験ではありますが、実は多くの実証研究で、アナリスト
の株価予想が予想中央値に収斂する様が日米で報告されています。もしかすると、自身のように外すのが怖くて、他者と似たような予想を出すアナリストは少なくないのかもしれません。では、もう少し突っ込んで、なぜ「外したら怖いな…」と感じるのでしょうか?
*論文は何を示しているの?
この問へのヒントとして論文「Herd Behavior and Investment(横並び行動と投資)」を紹介しました。投資担当者やアナリストがどれだけ有能でも100%結果をだせるわけではありませんし、100%良い情報ばかりを手にできるわけではありません。そのため、労働市場、会社の評価、上司の評価は、その投資担当者やアナリストの能力だけで決まらず、他者との行動の類似性によって評価されると指摘しています。
ざっくりと言ってしまえば、労働市場も会社も上司も、投資担当者やアナリストへの評価に非常に迷うことがあるので、他投資担当者や他アナリストとの相対的な比較で決めようとすると。なので投資担当者やアナリストは、みんなと同じような投資判断や予測を出しておけば、もしも大外ししたとしても、他の人も外しているし、しかたないよねということで、Reputationリスクを回避できるだろう。結果、自分の評価を大きく下げることはないというのです。そのため、投資担当者やアナリストにとって、他者を真似することが合理的になることがあるとベイズの定理を用いながら指摘しています。
*日経平均三万円予想ラッシュを振り返ると…
日経平均が上昇しだすと、一斉にアゲアゲ予想がでたり、下がりだしたらサゲサゲ予想が連鎖することがあります。これは、純粋にアナリストの能力や手に入れた情報だけに基づいて発信されているのでなく、もしものためのReputationリスクを回避したいからかもしれません。
年初に日経平均3万円予想やTOPIX3000ポイント予想がラッシュのように出ました。昨年は20%上昇して日経平均は2万4千円をつけました。今年、3万円をつけるには、そこから30%近く上昇しないといけないだけに、少し突飛な予想に見えました。でも、予想の連鎖が起きているところをみると、もしかしたら上記のようなことが起きているかもしれませんね。
メルマガでは上記の内容を、ポイントも抽出しながら紹介しています。その他には、決算分析や日々の博士後期課程での生活模様も紹介しています。
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応援いつもありがとうございます!
崔真淑(さいますみ)