【東芝&のれん】2月20日BSJAPAN「日経モーニングプラス」~さいますみのマーケットラボ~のまとめ!
みなさま、こんにちは。崔真淑/さいますみです。
2月も終わりを迎えようとし、春のような穏やかな日も増えてきました。ただし、経済・マーケットは陽気さとはかけ離れた動きもチラホラ見せています。例えば、東芝を巡る環境は、穏やかさとは真反対の動きです。
今回は、BSJAPAN「日経モーニングプラス」でも取り上げさせて頂いた、東芝から得られる投資家への教訓を考えていきます!
(毎週月曜日朝6:40からレギュラー出演しています!宜しくお願いします。)
(制作:BSJAPAN「日経モーニングプラス」クルー陣。以下同様)
Qそもそも、東芝の件って何が起きたの?
こちらは、2014年からの東芝株価チャートです。2015年7月に不適切会計が発覚。その後に役員の一新や、ガバナンスの在り方など改革が行わなれ、株価は浮上しています。しかし、昨年12月に米国原子力事業の数千億円規模の減損を発表。2月には、それに関して7125億円計上見込みを発表しています。
そして、株価はまたも右肩下がりになりました。現在は、メモリー事業の過半数株売却を東芝が検討と伝わり、株価は少し戻りつつありますが…。
不適切会計と大規模減損という二大危機が起きました。ただ、一度目の危機である、不適切会計発覚時に、二度目の危機のリスクを想定することは不可能だったのでしょうか?
Q二度目の東芝危機≒米国原子力事業減損を想定する声はあったの?
一部では、もう一度危機が起きても不思議でないねと噂は出ていました。というのも、一度目の東芝危機が終焉に向かいつつある時も「のれん」の話が話題に上っていたからです。
ある企業の社外取締役で会計士の方とも、当時はこの話をよくしていました。「のれん」と「株主資本」のバランスが悪いことが話題でした。どういことでしょうか?
M&Aによって、被買収企業の資産を買収企業側が受け入れるとき、特許など分離して譲渡可能な目に見えない資産が含まれる場合があります。この目に見えない資産には、「のれん」と「無形資産」が存在します。この中でも、「のれん」は曲者です。
Qなぜ「のれん」は曲者なの?
一般的に被買収企業を買収した場合に、金銭的価値に上乗せして評価するプレミアム分を指します。一般的には、ブランドとも言われることもあります。
しかし、それだけ割高に企業買収されても、投資回収の見込みがないとみなされた場合、減損が行われます。つまり、「のれん」という資産を減らし財務諸表に反映させるのです。ちなみに、会計基準別に減損する規定は違います。
つまり、全く価値がないと判断されたら「のれん」は、100%近く減損されることもあります。それがきっかけで債務超過に転じる場合もあります。そんな、もしものリスクに備えるにはどうしたらよいでしょうか?それは、返済義務のない株主資本をのれん以上に乗せることです。つまり「のれん」<「株主資本」という財務状態を維持できているかということです。この点が、投資家が東芝から得るべき教訓ではないかと私は考えています。
上記の図は、一度目の東芝危機の時の、財務状態(貸借対照表)の状態です。この時でも、「のれん」は「株主資本」以上ありました。突発的なことがおきたら債務超過リスクはあたわけなんですね。
Q「のれん」と「株主資本」のアンバランスから、大きな変化を迎えた企業は他にも?
こうした、「のれん」と「株主資本」のアンバランスが原因で新株発行を行ったのではないかと投資家の間で噂されたのは電通です。イギリスのイージス買収の直後に「のれん」が急拡大。その後に新株を発行しており、株主資本増強に動いたのでは?と推測されています。
また、「のれん」を企業側が減損するタイミングも、諸説様々です。本来は、公正な減損テストを行ってされるのですが…。しかし、そもそも「のれん」の公正価値の定義すら非常に難しいのが現状です。
ファイナンス分野のエージェンシー理論に基づいた実証研究では、こんなことも報告されています。「のれん」の公正価値は経営者の将来行動に部分的にでも依存する。だからこそ公正価値を検証することはほぼ不可能であり、経営者のインセンティブによって「のれん」の減損は裁量的に行われることがある…と。
社長交代で「のれん」が一気に減損されるなんてことも少なくないですしね…。
「のれん」の扱い方と、そして社長交代時の「のれん」を巡るリスクは、投資家からすると備えて損はなさそうですね。
ということで、長い文章を読んで頂きありがとうございます!
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崔真淑/さいますみ