企業の最適役員構成ってなんだろう?〜企業不祥事とコーポレートガバナンス〜
みなさま、こんばんは。
エコノミストの崔真淑(さいますみ)です。9-10月に渡り、将来の方向性を意識するようなことが立て続けに起きました。
更に精進すべき事案がでてきたのですが…それを言い訳にブログをお休み中でした(汗) 改めてブログからも発信していきますので、何卒引き続き宜しくお願い致します!
今回は何かと話題の企業不祥事について、出演番組を振り返りながら、ずバーーーっと斬っていきます!
*企業不祥事でも、株価上昇の神戸製鋼所
国内の資本市場では、企業不祥事が何かと話題になっています。特に、神戸製鋼所の製品データ改ざん問題は、ニュースを見る限り根深いようです。気になるのは、同社株価は急騰していることです。
考えられる理由は、納入先企業へのリコール費用が見えてきたこと、目先の最悪ケースを逃れるために各メガバンクが社債償還用に500億円の融資を決めたことが影響しているでしょう。
懸念事項もどの程度の懸念かが見えると、悪材料折り込みとばかりに、株価がむしろ上昇する事も少なくないですしね…。
とはいえ!!!不祥事を未然に防ぐためにも企業統治=コーポレートガバナンスの在り方が変わらない限り、株価も企業価値の本格的復活は難しいのではと、自身は考えるのです。
(番組後に伊藤教授と一緒に!)
*なぜ、コーポレートガバナンス は重要なのか?
なぜ、コーポレートガバナンスの課題解決が必要なのでしょうか?株式会社という仕組みは、経営と所有(≒株主)を分離させたことで、ビジネス環境を発展させました。
しかし、経営陣が株主が見ていないところで、経営陣利益を優先して株主利益を損なわさせる(=モラルハザード)が起きるリスクも顕在化したわけです。経営陣を監視するためのコーポレートガバナンスが必要になったんですね。
神戸製鋼 製品の検査データ改ざん 複数の役員が黙認 | NHKニュースを見ると、神戸製鋼所の経営陣である、役員の一部は不正を知っていたことが報道されています。もしも経営陣の不正隠蔽インセンティブを削ぐような仕組みや、監視体制等…つまり確りとしたコーポレートガバナンスを作りあげることができていたら、神戸製鋼所の不祥事は、もう少し小さく済んでいた可能性もあったのかな…と自身は思うのです。
画像はWikipedia より
*なぜ、企業不祥事は起きてしまうのか?
そんなコーポレートガバナンスの視点から、下記について、出演させて頂いているレギュラー番組でフォーカスしました!
①なぜ、企業不祥事が起きるのか?
②経営陣監視体制としての、最適な役員構成とは?
日経CNBC昼エクスプレス〜崔真淑のサイ視点〜で、コーポレートガバナンス研究の専門家でもある、一橋大学大学院国際企業戦略研究科 伊藤彰敏教授をゲストにお招きして、解説して頂きました。
(番組で解説をしてくださっている伊藤教授。写真は日経CNBCのtwitterより!)
まず①についてですが、なるほどなぁというものでした。伊藤教授曰く…
そもそも、こうした不祥事の背景には、特に神戸製鋼の場合など、深刻な業績の低迷があると思います。本来、業績が低迷している時だからこそ、不正行為が社内に蔓延しないようにトップが目を光らす必要があり、そう意味でやはりガバナンスの問題につながります。
不正の温床を生み出しかねない業績低迷を打破できない場合、トップ経営者の交代も含む強い圧力が投資家サイドや他のステークホルダーからかかる仕組みが必要となる、ここにガバナンスの究極の目的があると思います。
こうした、不祥事の話がでると、一足飛びにコーポレートガバナンスの話になりがちです。でも、儲かっている企業には、不祥事に手を染めるインセンティブは働きにくいはずですよね。
生産性の低下や、業績低迷を打破したいという気持ちが、歪んだ形ででるのが企業不祥事とも言えるでしょう。
米国のエンロン事件も、同様ですよね。米国の場合は(上場企業において)過半数を社外取締役(≒経営陣株主の視点で監視する取締役)にすることで、ガチガチに経営陣を監視する体制がとられています。
一方で、日本は英国スタイルの経営陣監視体制がとられています。最適な役員構成は、企業で違うでしょ!だから、まずは最低でも社外取締役は2名。置かない場合は、説明してね!という、企業に選択を委ねる形です。
個人的には、企業不祥事を起こした企業は、役員構成に関して米国のような強制的な仕組みを導入を検討しても良いのかなと…。実際、東芝はプロパー役員は3名だけで、過半数は社外取締役という構成に変わりました。
*最適な役員構成とは?
そうした企業不祥事を未然に防ぐには、経営陣を監視する仕組みが必要です。そのために、株主利益の視点から監視する、社外取締役が存在するわけです。
一方で、社内からのプロパー役員の比率については、 コーポレートガバナンス確立のためにも、どのような視点があるのでしょうか?こちらも伊藤教授曰く…
研究成果としてコンセンサスを得ているのは、取締役会の規模が大きくなると、企業業績に悪影響を及ぼすということです。我々の日常的な経験からも、人数が多すぎると、会議で生産的な議論をしたり意思決定したりできませんよね。日本企業では、一昔前は、取締役とは出世のゴールポジションの一つでもあり、非常に取締役数が多かったのです。
最近では取締役の人数は随分と減ったと思います。投資家サイドの目線で見て、大規模な取締役会=経営者への監視機能が機能しない、という捉え方を企業の側も受け入れざるを得なかったからだと思います。しかし社外取締役の数や比率は、2015年にガバナンス・コードが適用されるまで、一部の企業を除き、本当に増えなかったですね。
たしかに、身の回りをみても、人数が多すぎたり、その場の息が掛かりすぎた人が多すぎると活発な議論ができないことは少なくないですよね(汗)
実際、この学術研究が当てはまるのかは検証が必要でしょうが、神戸製鋼所は役員人数が会社の規模にしては非常に多い印象があります。16人…。。
その他、学術研究では社外取締役が機能するのは、企業タイプによっても違うという報告があります。
下記の論文では、特殊な知識が必要となるだろう、研究開発費や無形資産が過多な企業ほど、外部から来る社外取締役の経営陣監視機能が難しくなること指摘しています。
Fama, E., and Jensen, M., 1983, "Separation of ownership and control" Journal of Law and Economics
以上を踏まえると、コーポレートガバナンスの課題解決は、時代、国、企業タイプによって答えも違うようです。だからこそ、現状の制度に満足することなく、学術の視点からもブラッシュアップが必要なんでしょうね…。
ちなみに、ガバナンス先進国と言われる米国でも、金融システムや投資銀行の在り方という変化を通して、絶え間無く変化してるんですよね。この辺りは、また次回以降に!
ながーい文章を読んでくださって、ありがとうございます!
一刻も早く、神戸製鋼所の株主の方々が安心できるマーケット環境になればと思います。
応援いつもありがとうございます!
引き続き、全力で精進していきます!
崔真淑/さいますみ