”さいますみ/崔真淑”のオイコノミクス

Good ・ News and Companiesの”マクロエコノミスト崔 真淑 / さいますみ”です!資本市場、そして経済学の社会的意義を伝えるのが使命です!身近な話から資本市場の最先端の話まで皆様と一緒に考えていきます!ご連絡先はこちら→info@goodnews.jp.net

日経CNBC "崔真淑のサイ視点"を振り返る!ここが変だよ国内株式市場!スモール時価総額上場企業の悩みをファイナンス視点で解決する方法を考えてみた!

 みなさま、こんばんは。

 東京での生放送を終えて、名古屋からの新幹線な私です。いやー!移動って、アイデアを練るのに最適ですね。 今回、皆様にお伝えしたいのは、国内株式市場の課題と解決策についてです。

 

自身の研究分野はコーポレートガバナンスと、それによる企業の資金調達への影響です。研究で、今のガバナンスコードって、日本の株式市場の発展のためにブラッシュUPする余地があるんじゃないかなーと考える場面が多々あったんです。

 その課題意識を、あ!やっぱりそうか!と確信を持つきっかけが、日経CNBC「昼エクスプレス」コーナー"崔真淑のサイ視点"の出演して頂いた、エー・ディー・ワークス CFO 細谷さんの解説でした。ライツイシューを発行したことでも、話題に同社です!

 番組でのお話を、私の課題意識と一緒に記していきます!

 

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(同社のファイナンス手法の意義と狙いについて伺いました!)

 

*ここが特殊だよ、日本の株式市場!

 まずは、日本の株式市場の特殊性についてお伝えしますと…。(あくまで私の考えですが)制度では、監査等委員会設置会社やら、ガバナンスコードと会社法の矛盾?等々。

 更には、時価総額の構成も特殊です。アメリカでは、最低でも時価総額300億円規模がないと上場は難しいです。しかし、日本では時価総額100億円未満企業が多く存在します。下記は、8月末時点の時価総額100億円以下の企業群の抜粋です。なんと1218社も存在するのです!これは国内上場企業の約3分の1近い数字です。

 日本の株式市場の発展をイノベーションに結び付けるには、大企業ありきの制度ばかりを適用していてはナンセンスなわけです。もちろん、そのためにマザーズが存在するのですが、東証一部、二部にも時価総額100億円未満企業が多く存在しています…

 

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時価総額100億円企業の抜粋!東証一部、二部企業も点在…)

 

*スモール時価総額企業の課題は、ファイナンスにあり!

 では、そのスモール時価総額企業が直面するだろう課題はなんでしょうか?ずばり、株式市場での資金調達=ファイナスです

 理由は、2つあります。1つ目は、資金調達金額の限界です。公募増資をするにしても、常識的には時価総額の10%です。多くて20%程度です。(話題になった出光興産の30%の公募増資は、物議を醸して当然なのです。)

 株式市場で資金を調達するということは、負債とちがって返済義務がないからこそ、長期で大きなプロジェクトに投資するのにうってつけです。だから、できれば大きな金額を株式市場で調達したい…。ところが、どんなに業績がよくても認知度が小さいことや、流動性がないことから時価総額が小さい企業では、資金調達金額に限界があるんですね。例えば、時価総額10億円の企業が、10%調達したところで…。。

 2つ目は、そんな小さな規模しか資金調達できないのに、証券会社が引き受けてくれるでしょうか?(公募増資の際は、証券会社のサポートが必要です) 手数料が微々たるものなのに、証券会社側の手間ばかりかかる可能性も。

 あるVCの方が、日本は先進国で最もIPOしやすい!なんて仰ってました。しかし、スモールIPOをしたところで、投資家からの資本コストを上回るようなリターンをあげよというプレッシャーばかりで、株式市場での資金調達というメリットはうけにくいかもしれませんね。もちろん、その他にもメリットは沢山あるんでしょうが…

 

*スモール時価総額企業のファイナンス策としての、ライツイシュー

 では、上記のような課題を解決するためにどうしたらよいのでしょうか?今日のゲストで来ていただいたCFOの細谷さんのお話にもありましたが、ライツイシューは非常に有効な策の一つだと感じました。

saimasumi.hatenablog.com

 このライツイシュー(注 ノンコミットメント型のみ)だと、証券会社の存在なくして資金調達をすることが可能です。上記ブログにも記載したように、既存株主の懐にも優しいです。実際、一時期は多くのスモール時価総額企業が実施しました。しかし、制度的に既存株主に資金調達を実質的には強制させることも可能となり、債務超過企業に偏るなどの動きが起きてしまいました…。

 

ライツイシューの問題点は何か?それは強圧性!?

 既存株主には、現状の株価よりも低い水準での権利行使価格が付与された新株予約権が無料で付与されます。しかし、あまりにもディスカウントされた株価が付与した権利が回ってきたらどうしましょう?

 ディープディスカウントされた新株が大量に出回れば、増資終了後は株価は平均的には下落が予想されます。100円で出回っている株価に対して、新株が20円なら、増資後は平均60円程になっていても、不思議でないです。

 つまり、行使価格があまりにディスカウントされたら、それは既存株式に強制的に権利行使≒資金調達に賛同させる≒強圧性(アカデミックな分野で言われている言葉です)が起きかねないのです。

 ただでさえ、資金調達がしにくい債務超過会社にとっては、強圧性を用いてライツイシューを発行するインセンティブが働きやすかったのかもしれません。この現象は、日本だけでなく、欧米でも確認されています。

 

 そんな強圧性を排除して、挑んだライツイシューが、エー・ディー・ワークス。行使価格をライツオイシュー実施を発表した株価39円と、同額に設定したんですね。行使価格を行うには、株価がこの水準より上昇しなくては、誰も行使しないでしょうよ。。しかし、ライツイシューを発表した後には、乱高下はしたものの、株価は40円台をキープ。同社は、目安としている資金調達額は達成できるのか、研究トピックとしても非常に関心があります。

 

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(放送後にパチリ)

 

今後も、様々な事象をファイナス視点でにブログに記載していきます。

研究も仕事も全力精進だ!

応援ありがとうございます!

 

崔真淑(さいますみ)